リンヴォック
12歳から治療できる
注射を使わない内服薬リンヴォック
リンヴォックは、2021年8月にアトピー性皮膚炎の治療に追加された内服薬です。1日1回の服用で、アトピー性皮膚炎における炎症をコントロールし、服用開始早期からかゆみや湿疹といった自覚症状の改善が期待できます。
皮ふの炎症やかゆみは、炎症を引き起こす物質「サイトカイン」の働きによっておこります。リンヴォックは、このサイトカインの働きを阻害しさらにサイトカイン自体の増加も抑えることで、皮ふの炎症やかゆみの根本をブロック。既存治療で十分な効果が得られなかった方にも効果が期待できます。
大村市でアトピー性皮膚炎にお悩みの方は、お気軽に上田皮ふ科にお越しください。
既存の治療法で効果のなかった方へ
湿疹やかゆみの
原因を根本からブロック
- リンヴォックの
作用機序 -
リンヴォックは、デュピクセントやオルミエントと同様にアトピー性皮膚炎の湿疹や痒みの原因を根本からブロックする薬剤です。
アトピー性皮膚炎を引き起こす主役は「Th2」というリンパ球です。リンヴォックはTh2から分泌されて皮ふの炎症やバリア機能の低下を引き起こすサイトカイン(IL-4、IL-13)の働きをブロックすることで、アトピー性皮膚炎の発症や悪化を抑えます。
またリンヴォックは、Th0がTh2リンパ球に分化する過程を阻害するするため、Th2リンパ球の上流と下流で働きを抑制することができるのです。
炎症の信号を伝える経路を阻害
リンヴォックはJAK阻害薬とも呼ばれ、細胞内でJAK(ジャック)と呼ばれる部分に結合し、炎症の信号を伝える経路「JAK-STAT(ジャック・スタット)経路」を阻害します。
炎症を引き起こす物質(サイトカイン)が細胞の受容体にくっつくことで発信される「炎症を引き起こす信号」を、リンヴォックが途中でブロックすることで、皮ふの炎症やかゆみの発生が抑えられます。
またリンヴォックは、JAKのなかでも中心的な役割をもつ「JAK1」を強く阻害するため、高い効果と安全性が期待できると言われています。
- 従来の
アトピー治療との違い -
従来の治療では、皮膚のバリア機能が低下したり、炎症反応が促進した部分を塗り薬や内服薬で抑えているのみでした。リンヴォックは、炎症を引き起こす仕組みを根本からブロックするという点で、これまでとは全く新しい機序による薬剤と言えます。
アトピー性皮膚炎 全身療法の比較
アトピー性皮膚炎の治療は、新たな薬剤の承認が進み、いくつかの選択肢が存在します。
下記の表に、それぞれの薬剤の特徴や対象年齢などをまとめました。治療薬比較の参考にご覧ください。
薬剤 | デュピクセント | オルミエント | リンヴォック |
---|---|---|---|
投与方法 | 皮下注射 | 内服 | 内服 |
投与間隔 | 2週間に1回 | 毎日 | 毎日 |
皮膚症状の 改善度 |
高 | 中 | 中 |
かゆみの 軽減度 |
高 | 高 | 高 |
効果発現 | 1〜2週間 | 1〜2日 | 1〜2日 |
安全性 | 安全 結膜炎の副作用 |
定期的な採血で確認 | 定期的な採血で確認 ニキビ |
導入前検査 | 採血 | 胸部X線/採血 | 胸部X線/採血 |
治療可能な 年齢 |
15歳以上 | 15歳以上 | 12歳以上 |
※上記の表は公開されている知見を元に、当院での治療経験やドクターの私見を加えて作成しています。
リンヴォックの治療法と注意事項
高い効果を期待できますが、誰でも使用できる薬剤ではありません。
治療前に以下の内容を十分ご確認ください。
治療の流れ
-
- 01問診・診察
アトピー性皮膚炎の症状について、ドクターが丁寧に診ます。
- 02胸部X線・採血
胸部X線と感染症や腎臓機能に問題ないか確認するため、採血検査をします。
(連携先内科で実施)- 03結果報告・治療開始
次回受診時に、結果を報告し、検査結果に問題がなければ、投与開始となります。
治療可能な方
-
リンヴォックは、デュピクセントやオルミエントが15歳から治療可能なのに対し、12歳以上から治療可能です。その他については、基本オルミエントと同じです。
- 01他の治療で効果が不十分な中~重症の成人アトピー性皮膚炎の方
成人アトピー性皮膚炎と診断されており、かつステロイド外用剤やプロトピック軟膏にて6ヶ月以上治療を行っている必要があります(あるいは副作用や過敏症のため、これらの外用療法が継続できない方)。ステロイド外用やプロトピック軟膏外用でコントロールできている患者様は治療できません。また、免疫抑制剤(ネオーラル)やナローバンドUVBを併用すれば改善する患者様も治療ができない可能性があります。
- 0212歳以上の方
12歳未満の方は治療ができません。12歳以上の方のみ治療が可能です。
- 03外用治療も併用できる方
リンヴォックを内服される方も、基本は外用治療を併用します。また、内服が終了しても外用治療は継続していきますが、使用量が少なくなり、保湿剤のみで症状がコントロールできるようになる方もいらっしゃいます。
- 04以下の3つの項目が一定のスコア以上の方
-
- IGAスコアが3以上
- 全身又は頭頸部のEASIスコアが16以上
- 体表面積に占めるアトピー性皮膚炎病変の割合(%)が10%以上
※これらのスコアは、当院の院長が皮疹の状態を見て判定します。
- 05感染症と腎臓機能検査にて問題のない方
血液検査、胸部レントゲン、ツベルクリン反応などで、感染症と腎臓機能障害を否定する必要があります。
投与に注意が
必要な方-
- 01喘息など他のアレルギー疾患を併発している患者様
リンヴォックは喘息にも効果があります。ただし、急にリンヴォックを中止したときに喘息が悪化して命に関わる可能性があるため、リンヴォックを投与中にも従来の喘息の治療は継続することが大切です。
- 02寄生虫感染症の患者さま
現在の日本で寄生虫に感染するリスクはほとんどありませんが、寄生虫に対する免疫を低下させるため注意は必要です。
- 03妊婦、産婦、授乳婦の方
完全には禁止されていませんが、基本的に投与は難しいとされています。
- 04小児、高齢者の方
12歳未満の方は治療ができません。12歳以上の方のみ治療が可能です。
リンヴォックの費用
自己負担額(窓口で支払う金額)
1日 (15mg服用の場合) |
1ヶ月 (28日/15mg服用の場合) |
|
---|---|---|
3割 | 1,491円 | 41,750円 |
2割 | 994円 | 27,830円 |
1割 | 497円 | 13,920円 |
- 上記は2020年11月現在のリンヴォックの薬価をもとに計算しており、今後変更になる可能性があります。
- 別途、初診料、再診料、処方せん料などがかかります。
- 以下に当てはまる方は高額療養費制度の対象になる可能性があります。
1)年収370万円未満 2)住民性非課税者
医療費の自己負担割合
※自治体によっては独自の医療費助成制度がある場合があります。詳しくは各自治体にお問い合わせください。
リンヴォックについて
よくある質問
- Q.治療はいつから可能ですか?
-
初診の方は、まず診察をして皮疹の程度をスコア化します。条件を満たしていれば、次の受診時に治療可能です。
- Q.治療は受診した当日に受けられますか?
-
初診時には投与できず、次の受診時からの投与になります。当日、初診の方はこれまでの治療期間や治療内容を伺い、皮疹の程度をスコア化しなければなりません。その上で適応と判断されれば、次の受診時に投与することになります。
- Q.どのくらいで効果が期待できるのでしょうか?
-
個人差がありますが、投与翌日からかゆみが改善される方もいらっしゃいます。
- Q.症状がおさまったら飲むのをやめてよいですか?
-
薬の作用で炎症を抑えているため、急にやめると症状が悪化する可能性があります。
自己判断で服用中止や減量は行わずご相談ください。 - Q.服用し忘れたときはどうしたら良いのでしょうか?
-
気がついた段階で、1回分を服用してください。その後、通常の通り1日1回服用してください。
丸一日服用を忘れてしまった場合は、飲み忘れた分は飛ばして、翌日のいつもの時間に1回だけ服用してください。
同日に2回分をまとめて服用しないでください。